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【R5葛高018・orange】オレンジ色の風に乗せて(皐月)~包む~

 風薫る5月を代表する童謡の一つに『せいくらべ』がある。海野厚作詞、中村晋平作曲の大正時代の童謡だ。因みに、童謡とは主に大正中期から昭和初期にかけて普及した子供のための歌や詩を指し、唱歌とは明治初期から第二次大戦終了後まで学校教育用に作られた歌を指すなど、意味には違いがある。その『せいくらべ』の歌詞の一番。

  柱のきずは おととしの 五月五日の 背くらべ
  粽(ちまき)たべたべ 兄さんが計ってくれた 背のたけ
  きのうくらべりゃ 何(なん)のこと
  やっと羽織の 紐(ひも)のたけ

「せいくらべ」より一部抜粋

 一度は耳にしたことがあるだろう。私が、確か小学1年生の音楽で習ったのだが、「ちまき」が分からず、友達に「ちまきって食べたことあるか。」と尋ねても、知っている人は誰もいなかった。店で売っていたのかも知れないが、育った地区では五月五日に食べることはなかった。後年、調べて分かったことだが、「ちまき」は奈良時代に中国から伝わり、その当時の都「奈良」の周辺で食べられるようになったので、今も関西でよく食べられているのだそうだ。春秋戦国時代(紀元前770~221)の中国にあった「楚」という国に、屈原という政治家で詩人がいたのだが、彼の命日である5月5日に、供養として米を葉に包んで川に投げ入れたのが、端午の節句に「ちまき」を食べるようになったという説がある。私が、初めて「ちまき」を食したのは、平成になってからだと思う。団子屋さんで売っていたのを買ってきた。巻いてある笹をめくると、中は中華風炊き込みご飯のおにぎりで、食べてみたらとても美味しかった。

 そう言えば、ちまき以外にも、葉で「巻いた」、あるいは「包んだ」食べ物が少なくないことに気づく。私が食べたことがあるのは、「柏餅」、「桜餅」、「柿の葉寿司」、「朴葉みそ」、「ロールキャベツ」ぐらいだが、世界全体を見渡すと、バナナの葉やぶどうの葉などで包むのもあるという。葉で食べ物を包むようになった背景には、葉の持つ殺菌作用等で、保存性を高めることがあるそうだ。バナナの葉などは、撥水性に優れているためか皿の代わりに、また、包んだ食べ物をそのまま蒸すなど調理の面でも活用されやすいなど、様々な使い方があるようだ。

 食べ物に限らず「何か」を「何か」で「包む」ことは、あまりに身近過ぎて普段あまりその行為を意識しないまま過ごしているのは私だけであろうか。改めて「包む」ことを考えてみると、「包む」行為には、それを包む人の心遣いが感じられるのだ。例えば、何かの記念日に、大切な誰かに贈り物を渡すことはよくある話だ。贈り物を何にしようかなどと考えて用意するが、贈り物の中身だけをそのまま相手に渡す人はいるだろうか。ほとんどの人は、贈り物を箱に入れ、その箱を包装紙で包み、時にはリボンを結ぶなどした上で、袋に入れるなどして渡すのではなだろうか。冠婚葬祭の場面では、その内容によって包み方を変えるなど、相手に贈る側の気持ちを伝えている。「包む」行為は、相手を思いやる気持ちの表現ではないかと感じた。

 平成25年に紫綬褒章を受章した松任谷由実氏が、1974年(当時は結婚前で荒井由実)、『やさしさに包まれたなら』の曲を発表する。映画のテーマソングにも使われたので、知っている人は多いかと思う。

 私は音楽の専門家ではなく、その歌詞を解釈できる素養も知識も持ち合わせていないし、するつもりもないのだが、世界全体が優しさに包まれるのなら、どんなに素敵なことかと思う。

 この先、どんな未来が私たちを待っていようとも、学校は優しさに包まれた空間でありたい。イソップの寓話『北風と太陽』の「太陽」のように。

 五月雨がいつの間にか止み、現れ始めた青空の切れ端を見上げながら思った。

書き人知らず

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