新緑の季節から水無月へ。
鮮やかな緑に覆われた葛巻町の山々は、雨に濡れて、より一層深い緑へと色を変える。山に降った雨は、いくつもの小さな沢を作り、やがて馬渕川に合流するのである。馬渕川は、岩手県下閉伊郡と岩手郡の境にある袖山(標高1,215m)にその源を発し、岩手県の県北を流れて青森県に至り、八戸市を貫流して太平洋に注いでいる、流路延長142kmの一級河川である。この長さは、岩手県を流れる川としては北上川に次ぐ2番目の長さとなっている。
さて、「馬渕川」の読み方について、皆さんはご存じだろうか。私が中高校生のころの記憶では、マベチ、マブチ(こういう苗字の知人がいた)、マベツやマブヅ(大人はずいぶんと訛ってるな!と思って聞いていた)など、三、四種類くらいの呼び方があった。そして、その答えはマベチであると誰かに教わった。
最近、ある本棚に並んでいた葛巻町誌第1巻から第4巻が目に留まり、引きつけられるように開いてみると、『馬渕川の名称』について詳述されたところがあった。あまりにも興味深い内容だったので、ここに紹介したいと思う。
今に伝わる物事が本当かどうか気になり、古い文献を様々調べていったとき、最終的に「複数の説明がなされ、所説ある」という結論に行きつくことはよくあること。馬渕川の読み方についても、馬渕川流域の市町村を中心に文献調査をしたとして、その結論に至る可能性は高い。ならば、馬渕川の源流がある葛巻町の文献に記されていることが最有力と考えるのは自然なこと。今後は、馬渕川の話題が出たときは、「『マベツ川』と呼ぶのが正しいらしいよ」と一言添えてみようか。
書き人知らず